いつまでも可愛らしいひと

「バックが欲しい」

87歳の母からの電話でした。

「デイサービスに行くのに、ノートと万年筆と身の回りの物、あれこれ荷物があって、丁度いい大きさのバックがないから、買って送って欲しいのよ〜、その辺のやつでいいから〜、お金(確かにその辺のお値打ち価格です)送ったからね〜。」

足が不自由になってしまった母は、思うように買い物がしにくいので、このような電話をよく私にかけてくるのです。
でも、母の注文を満足させるのはとても難しいのです。
彼女はオシャレ大好きで、テレビや通院している病院などで、ファッショッンチェックをしていると思われます。私なりに考えて選んでおくるのですが、なかなか満足してもらえません。

今回は年末年始で私も忙しくて、母の買い物は特に素早くすませました。バックと他にも頼まれた物があったので、とにかく急いで選んで送りました。
しかし、だめでした。バックは大きすぎたそうです。というか、好みではないのです。それを楽しみに待っていたのでしょうね、ちょっとがっかりしたような声でした。
「もう、せっかく送ったのに、、、、」  むっとした私でした。

夫に言わせると、「始めから分かっていたことじゃないか、素敵なもの、皆にいいねって言われるバックでしょう!」です。

確かにそうなのですよ。その通りです!

バリ島旅行や、孫の出産でそちらへ気持ちがいっていましたしね。
表向きはね。
というより、彼女の気持ちを理解していても、それを叶えてあげる事を躊躇していたのです。

母は昭和2年生まれです。
女学校を卒業後、地元の県立農業試験場に勤めましたが、当時ことですから、二十歳で結婚しました。戦地(朝鮮辺り)から帰ってきた父(26歳)とお見合いだったそうです。その後、姉、兄、私の3人の子供を生みました。父は母が60歳のとき亡くなりました。
私を生んだ時は33歳で、お産婆さんの、実家に帰っての出産だったそうです。
3750gの大きな子だったので、「私はあの時大変、せつなかった」と、当時を思い返しては言っています。今なら出産直前に会陰切開するでしょうが、お産婆さん出産の当時はそんなこともなく、「さけた」そうです。縫う事も無くとにかく、暫くはトイレのたびに辛かったそうです。
私は、この話を度々聞いて来たのですが、初孫を迎えた今、母が言った「せつない」の言葉を前より深く考えさせられました。
(「せつない」は方言的表現かもしれません。)
母への初孫が生まれた報告の電話で、初めて、私を生んでくれて「ありがとう」と言った私でした。
子供の存在、孫の存在、家族の存在に本当に感謝の気持ちになりました。

母から今度は、バックの好ましい大きさを書いた紙が送られてきました。
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達筆だった人ですが、この頃は字を書くのも思うようにはいかないみたいですね。
母の残念そうな声が、耳に残ります。
私が躊躇した事は、くだらない事だと分かりました。
2月で母は88歳になります。いつまでもいつまでも可愛らしいひとなのです。
彼女に似合う、素敵なバックを探してみます。
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by 1370kaori | 2015-01-20 23:25 | 日々の風景 | Trackback

疲れたら休んでいいよ、美味しいもの食べようよ、お家へ帰ろうよ、そのうち元気になるかもね。


by 1370kaori